
寒い冬、悩まされるのがカサカサ乾燥。特に手が乾燥して、湿疹にまでなってしまう人も多いのではないでしょうか。
水仕事の多い主婦・美容師・理容師・洗い場でのお仕事をしている人にとっては非常に厄介な症状です。ヒリヒリ痛くて物が持てるような状態じゃなかったり、痒みが酷くて夜も寝付けなかったり。
また、妊婦さんにも手湿疹は起きやすいとされていますが、できることは限度がありますよね。
「湿疹が起きるのはなぜ?」「薬を塗りたい…かといって何を塗ればいいのかわからない」「何か塗ったとしても、普段の生活はどう過ごせばいいの?」「他にも改善策はないの?」「ステロイドは平気?」など手湿疹のあらゆる疑問に答え、改善に導きたいと思います。
そもそもこの痒みや痛みって一体何?
手や指に急に現れたポツポツとした湿疹や痒み。その湿疹の正体とは…?
水泡は手湿疹の前兆
昨日までは何ともなかったのに、ある日突然手の平や甲・指先に現れる小さな水泡。それは一度再発するととても治りにくいと言われている「手湿疹」の前兆である事が多いのです。
この水泡はとても痒いのが特徴です。我慢できずに掻いてしまうと、水泡が破れ中の液体が出て水泡がどんどん広がってしまいます。
水泡は出ていないが手に痒みや違和感を感じる方や、痒みはさほどないが水泡が出てきたという方は「ただの乾燥かしら?」などと軽く考えず、すぐに手湿疹予防の対策を実行しましょう。
主婦湿疹の「乾燥型」「湿潤型」
水に触れる機会が多いほど、肌に必要な皮脂や水分が失われていきます。
この手湿疹は、洗濯・炊事・掃除など1日を通して水に何度も素肌をさらさなければいけない主婦に多く見られる湿疹である事から、別名「主婦湿疹」とも呼ばれています。
この主婦湿疹には2つのタイプがあり、自分がどちらのタイプかによって使用するお薬も違ってくるので、しっかりと見極めましょう。
- 乾燥型
手の水分が過剰に減少し、カサカサしたり手の皮膚が厚く硬くなる。酷くなるとひび割れを起こし出血する事も。 - 湿潤型
手の平や指の腹に小さな湿疹や水泡が現れる。痒みが出たり皮膚が赤くなる。
主婦湿疹のタイプは上記2タイプですが、人によっては乾燥型と湿潤型の両方が混在している場合もありますので、自分の湿疹を良く観察する事が大切です。
アレルギーの「遅延型」「即時型」
皮脂や水分が失われると、肌が本来持っている「バリア機能」が低下します。このバリア機能が低下する事で引き起こされるのが「アレルギーによる主婦湿疹」なのです。
アレルギー反応は個人差が大きいですが、元々アレルギー体質の方はバリア機能が低下する事で更にアレルギー体質になってしまうと言う悪循環に…。
そしてこのアレルギーによる主婦湿疹タイプも「延長型」と「即時型」に分けられます。2つの違いを詳しく見て行きましょう。
- 延長型
アレルギー物質に触れてしばらく経ってから湿疹・皮膚が赤くなる・痒くなるなどの反応が起こる。 - 即時型
アレルギー物質に触れて数分後に接触した部分が赤くなったり蚊に刺された様な盛り上がりができる。
意外と見落とされがちなのが、アトピー性皮膚炎が手湿疹として現れる場合です。
「子供の頃にアトピーだった」経験がある人や「親がアトピー」といったいわゆる「アトピー要素」を持っている方は、アレルギー性の湿疹である可能性もありますので皮膚科を受診されることをおすすめします。
ヒビ・あかぎれとの違い
手の乾燥や皮膚がパックリと割れてしまうのは「ひび・あかぎれ」「手湿疹」のどちらにも共通する症状ですが、症状が現れている範囲を見る事でただの「ひび・あかぎれ」なのか「手湿疹によるヒビ・あかぎれ」なのかを判断することができます。
「ヒビ・あかぎれは部分的」「手湿疹は手や指全体に広がる」という事を頭に入れておくといいですね。
自分の症状は何か?を明確にする事で適切な処置ができ、症状の改善にもつながります。
対処策〜外用薬と内服薬〜
すでに湿疹や乾燥といった症状が出きてしまった方へ、湿疹のタイプに合った対処法をお伝え致します。
乾燥型は保湿剤
乾燥が原因で手湿疹が引き起こされている場合、保湿をしっかりと行うことが重要になります。
保湿剤は薬局やドラックストアなど、入手しやすく種類も豊富です。乾燥型手湿疹におすすめの保湿剤を特徴別に見ていきましょう。
ワセリン
ワセリンを塗ると皮膚の表面には油分の膜が張られ、水分蒸発や乾燥も防いでくれる効果が期待できます。また外的刺激から肌を保護してくれる働きがあるだけではなく、ワセリンの中には刺激物が入っていないため肌が弱い方や皮が剥がれてしまっている・出血している方でも沁みる事なく安心して使用する事ができます。
ワセリンの成分は油分ですので、塗ってしばらくはベトベトします。手袋をしてワセリンが他の物に付着するのを防ぐか就寝時のご使用をおススメ致します。
酸化するスピードもとても遅く、開封後も数年は品質が変わらない優れもの!手湿疹だけではなく、唇にリップクリームの代わりとして塗ったり顔パックに使用したりと用途は沢山。
「白色ワセリン」という品名で販売されていますので、ぜひ一家に一個常備しておいて頂きたい保湿剤です。
尿素
尿素配合のハンドクリームの特徴は何と言っても保湿力!乾燥してゴワついた肌に潤いを与えてくれます。
尿素にはタンパク質を分解する働きがあり、固くなった角質を柔らかくしてくれる効果も期待できますが、その分刺激も強め。ヒビやあかぎれによる傷がある方や敏感肌の方は、尿素配合クリームの使用は控えた方が賢明です。
使い始めは何ともなくても、だんだんと痒みが出てきたり赤くピリピリと刺激を感じてくる事もありますので注意をしながら使用してくださいね。
そしてこの尿素配合クリームは、乾燥も軽く比較的健康的な皮膚の方や10代の方などにはあまり適しておらず、「乾燥によって肌が固くゴワついている」方の使用に向いています。
塗布する場合は、症状が気になる部分のみに塗る事!健康な状態の皮膚に尿素を塗り続けると、必要なタンパク質も分解してしまい肌が本来持っているバリア機能を損ねてしまう可能性もあるからです。
ヘパリン類似物質
ヘパリン類似物質と聞いてピンとくる方はなかなか少ないのではないでしょうか?なじみのない名前ですが、実は皮膚科を始め小児科や産婦人科などでも「ヒルドイド」という名前で一般的に処方されているんです。
このヘパリン類似物質は乾燥を防ぎ肌の水分保持力をサポートしてくれるだけではなく、肌が本来持っている力を取り戻し、炎症を抑え新陳代謝を活発にしてくれる作用も期待できます。
副作用もほとんどない事から、アトピー性皮膚炎の方がステロイド代わりに使用したり、ステロイドと併用されているケースが多く見られます。
そしてこのヘパリン類似物質の凄い所は、ラインナップの多さです!クリーム・乳液・ローション等がありますので、お肌の状態や季節に合わせて「冬はクリームでしっとり・夏はローションでさっぱり」など、1年中快適に使用する事ができますよ。
肌に負担がかからない程度にしっかりと「塗り込む」事が、このヘパリン類似物質を塗布する場合のコツですので覚えておいて下さいね。
湿潤型はステロイド外用薬
ステロイド外用薬とは、人間の体内で作られる副腎室皮質というホルモンを人工的に作り出したもので、炎症が強い部分のみに塗布します。
抗炎症作用がとても強く、塗布してから数日で症状の改善がみられる事がほとんどですが、ステロイドを止めてしまうと症状が再発してしまう場合も見られますので、医師の診察の上できちんと使用される事をおすすめします。
ステロイドは効果に優れた外用薬ですが、そのぶん副作用も現れやすく特に長期的な使用は肌のバリア機能低下につながったり、毛細血管拡張や塗布した場所の多毛、皮膚が薄くなるなどの副作用が現れる事もあります。
またステロイドと言っても、タイプも種類も多く強さも5段階に分けられていますので、どれを使用していいのか判断に困ってしまいますよね。
ステロイド外用薬は使用方法を間違わなければ、しっかり効果が期待できる薬です。薬局などでも手軽に購入できますが、どれが自分に合っているのか分からない方や使用期間に不安がある方は、まずは皮膚科を受診し相談してみましょう。
アレルギーは皮膚科検査
市販の薬を使用してもなかなか症状が改善されないのであれば、アレルギーによる刺激による手湿疹の可能性も!
アレルギー性手湿疹の場合は、まず「何の物質が原因となっているのか?」の解明が必要になってきます。
アレルギー要因として「ゴム製品」「金属」などがありますので、皮膚科を受診して検査をお願いしましょう。アレルギー検査の費用は、項目によって金額が変わりますがだいたい5000円程度でできる皮膚科が多いです。
ステロイドが嫌いな方には非ステロイドやワセリン
ステロイドの副作用がどうしても気になる…と言う方には「非ステロイド性抗炎症外用剤」で炎症や痒みを抑えたり、痒みがない方は「ワセリン」での保湿を徹底的にしてみましょう。
非ステロイドとは、「ステロイドを含んでいない抗炎症外用薬の総称」になり、薬局では様々なタイプの非ステロイド外用薬が販売されています。ステロイドを含んでいないので副作用の心配はありませんが、塗布した後で日光に当たるとかぶれやすく、ステロイドよりも抗炎症作用は弱くなりますが、安心して使用できる利点があります。
店頭では「ノンステロイド」「非ステロイド」と表示されていますので、簡単に見つける事ができますよ。
内服薬は改善よりも痒みを鎮めるためのもの
痒みがどうしても我慢できない時は、皮膚科へ受診すれば「抗アレルギー内服薬」を処方してもらえます。
内服薬はあくまで「痒みを鎮めるため」のものであり、「手湿疹を改善する」お薬ではありませんので、内服と同時に症状に合ったハンドケアも必要になってきます。
対処策~日常でできる事~
手湿疹の早期改善や予防には毎日のケアが欠かせません!ちょっとした心がけが習慣になれば、大きな変化へとつながりますので日常のケアを心がけてみましょう。
水環境の整備
手の水分・油分が失われやすいのは水仕事の後・洗顔後・手洗い後など「水に触れた後」になります。
健康的な肌環境の場合でも、水に触れた後は乾燥して刺激を受けやすくなりますので、手湿疹に悩んでいる方ならダメージも大きく悪化する可能性が高いと言えます。手を必要以上に洗いすぎないように気を付け、水に触れた後の「保湿」を徹底しましょう。
可能であれば「ローション」などで失われた水分を肌に補ってからの保湿剤塗布をおすすめします。
顔のお手入れ同様に手のケアにも時間と手間をかけてあげる事で、頑固な手湿疹の改善や予防が期待できますよ。
低刺激の洗剤の使用
「何をしてもずっと治らなかった手湿疹が、洗剤を変えたらあっという間に良くなった!」という声も実は少なくありません。
主婦にとって洗剤は1日に何度も使うアイテムです。そのためもしこの洗剤が手湿疹の原因となっている場合、低刺激で肌に優しい洗剤に変えるだけで驚くほど症状が良くなる可能性もあります。
手荒れの原因のひとつである「アルコール」を取り除いた「ノンアルコール処方の洗剤」の使用は、水で洗うのとほとんど同じくらい刺激が少ないのが特徴です。スーパーで簡単に入手できますので、まずは試して見られてはいかがでしょうか?
ただ、いくら低刺激の洗剤に変えたからと言っても洗剤は洗剤。洗剤の頻繁使用は結局、手湿疹の症状悪化につながりかねません。
「食器は夜にまとめて洗う」「ゴム手袋を着用して洗う」などの工夫もしてみましょう。
手袋で外出、日常的にケア
手湿疹の症状が出ている方にぜひ試して頂きたいのが「手袋の着用」です。
家事や育児、料理に掃除など私達が日常的に行っている動作のほとんどは手を使っています。手湿疹によってバリア機能が低下し手の皮膚が薄くなってくると、ちょっとした日常動作からでも刺激を受け、症状を悪化させてしまう可能性があります。
日常的に手袋を着用することで、そうした外的刺激から手指を守るだけではなく、保湿効果も期待できてまさに一石二鳥です。
普段使いの手袋は「綿100%のもの」を使用し、できるだけ肌に負担をかけない様にしましょう。手汗で蒸れたら新しい手袋に交換して、常に清潔を保つことも忘れないで下さいね。
食器洗い時に使用する場合は「ゴム手袋」を使用すると洗剤の刺激に触れずに済みますし、水にも触れないので肌から水分が失われる心配もありません。
ただ、ゴム手袋を着用する上で気を付けて頂きたいのが「素手で直接装着しない事」です。素手でそのまま装着してしまうと、ゴムの刺激を受けてしまう可能性があるからです。それさえ気を付けていれば、ゴム手袋は手湿疹の方にとってとても心強いマストアイテムになってくれるはずですよ!
寝る時にはケアと綿の手袋を
就寝時のケアは、できるだけゆったりとリラックスできる環境でケアを行うのが理想的です。人の細胞は、寝ている間に修復されるのでそれを上手く利用しましょう。
たっぷりと塗布しても他の物にべとつきを移してしまう心配がないので、就寝時に使用する保湿剤はこっくり濃厚なクリームタイプやオイルベース・ワセリンが適しています。
保湿剤を塗布した後は、綿の手袋をして朝までお休みください。1日で見違える様にはならなくても、毎日続けることで肌が本来持っている保湿力を取り戻すのに役立ってくれます。
部屋の加湿
手湿疹の症状が特に悪化しやすい冬場。なぜ冬になると手湿疹が発症したり悪化したりするのでしょうか?
それは冬場の空気中の湿度が低く、空気が乾燥しているためです。いくら保湿剤や手袋でケアをしていても、空気が乾燥しているとせっかくケアした手指の潤いが乾燥した空気中に吸い取られてしまいます。
「空気が乾燥しているな」と感じたり、エアコンを稼働させている時は加湿器で空気中に水分を補ってあげましょう。
加湿器のタイプによっては、アロマオイルを垂らす専用の穴が付いている物もありますので、加湿だけではなくお気に入りの香りもお部屋に広げることが可能です。
血行促進
血行不良は人体に様々な悪影響を及ぼし、中でも代表的なのが「血行不良による肌バリア機能の低下」が挙げられます。
バリア機能が低下すると手湿疹の発症・悪化・再発につながりますので、保湿剤を塗布する時は手指のマッサージも同時に行う様にしたり、適度に運動することで身体を内側から温め、血行促進を促しましょう。
手の湿疹が起きてしまう原因
手湿疹はなぜ「手や指」だけに症状が現れるのでしょうか?皮膚の仕組みを説明しながら手湿疹が引き起こされる原因を探っていきましょう。
油分不足と水分不足による乾燥(水仕事・紙作業・アトピー性皮膚炎)
通常、人の皮膚には皮脂腺と汗腺があり皮脂腺からは皮脂が、汗腺からは汗が分泌されます。
皮脂腺から分泌される皮脂は「皮膚表面を刺激や乾燥から守る」という、ラップと同じ働きをしていますが、水仕事をする機会の多い職業の方や紙・紙幣を頻繁に触る方はそのせいで必要な皮脂が落ちてしまいます。
すると皮膚は水分の蒸発を止められなくなり、乾燥が進みやがて手湿疹が発症するといった仕組みです。
ラップをせずにそのまま放置した食べ物は、ラップをした物と比べて乾燥する速度が早いですよね?皮膚もそれと同じで、ラップの働きをしてくれる「皮脂」が少なくなるとどうしても中の水分が蒸発して乾燥を早めてしまいます。
アトピー性皮膚炎の方もまた、手湿疹になりやすいと言われています。アトピー性皮膚炎の方は肌のバリア機能が元々低く、皮膚の乾燥や外的刺激から手湿疹を発症させる可能性があります。
妊婦の場合の対処法!
妊娠をきっかけに今までとは違った体質に変わってしまう…というのは妊婦さんなら経験があるのではないでしょうか。体質変化によって発症した手湿疹にはどのように対処すれば良いのでしょうか?
ホルモンバランスの変化で湿疹が起きることがある
妊娠中は体内で「月経を止める・胎盤を作る」といった通常とは違う働きがされるため、いつもとは違うホルモンが分泌されます。ホルモンバランスが急激に変化し、乱れる事で手湿疹が発症したり悪化・再発する事もあります。
出産後しばらく経ったら自然と治ったという声や、妊娠中の湿疹発症以来、慢性化してしまったという声もあるのでただの湿疹と思わずきちんとケアをする事が大切です。
もし妊娠中に手や指の痒み・炎症が発症した場合は、自己判断で市販薬を使用する事は控え、掛かりつけの産婦人科に受診をすると安心ですね。
妊婦でもできる保湿方法
お腹の中に大切な赤ちゃんがいると思うと、飲み薬だけではなく塗り薬にも敏感になってしまう妊婦さんが多いのでは?
妊娠中はホルモンバランスの変化によって刺激に反応しやすい体質になったり、アレルギーを発症しやすくなる場合もあります。
そんな妊娠中でも安心して使用できる保湿剤は、やっぱり「ワセリン」です。刺激物が含まれていないので、お腹の中の赤ちゃんに影響する心配もありません。
ただ、症状が重く痒みが我慢出来ない様なら産婦人科もしくは皮膚科を受診してみましょう。妊娠中でも安全に使える痒み止め外用薬や内服薬・漢方などを処方してもらえる場合が多いですよ。
さいごに
手湿疹は一度発症すると治りにくく、再発しやすいやっかいな湿疹だからこそ日常的なケアをしっかりと行いたいですね。
手湿疹の原因は人それぞれです。自分に合った対処法が見つかるまで諦めない事も、手湿疹の改善のために大切な事ではないでしょうか。