
女性にとって「人生の3大イベント」の一つである出産。幸福感に包まれながらも一つの山場をやっとこさ乗り越えました。その後の6〜8週間までは産褥期(さんじょくき)と呼ばれるママの体を大切にしなければならない期間に入ります。それが明けてやっと妊娠前の正常な体に戻るのです。それまで決して無理をしてはなりません。特に産後4週間ごろまでは自由が利きにくい体であるので家族の協力を得ながら過ごす必要があります。今回は産後それぞれの時期に適した過ごし方についてご紹介します。
目次
産後の過ごし方
出産によって体力を極限まで消耗した母体は、完全に回復するまで約2ヶ月程度かかると言われ、妊娠前に比べ約7倍の大きさにもなった子宮・胎盤ができていた内部も妊娠前の元通りの状態になる目安が産後2ヶ月になります。
この大事な時期の過ごし方をそれぞれの週数に合わせてご紹介致します。
産後2週間の過ごし方(退院後の生活は?)
入院中と同じ生活を!
母子共に問題がなければ出産後5日~1週間で退院となり、自宅や実家に帰る事ができる産後2週目。この時期はまだまだ体力的にも無理は禁物です。友人や知人が訪ねて来られる事もあるかと思いますが、できるだけお断りした方が無難です。
会陰切開や帝王切開の傷などが痛む方も多いですが、赤ちゃんはそんなのおかまいなし!ママは24時間体制で赤ちゃんのお世話をしなくてはいけません。これでは出産で消耗した体力がいつまでたっても元に戻りませんよね。
退院してからの1週間は「病院での生活と同じように」過ごすのがポイントです。赤ちゃんの授乳とオムツ替えに専念できる環境が理想的!赤ちゃんが寝たらママも横になって一緒に休憩して下さいね。
「家事や上のお子さんの面倒などがあってゆっくり休めない…」と言う方は、祖父母にお願いしたり頼れる親族が近くにいない場合は地域のサポート制度などを利用すれば代わりに家事をしてくれたり子どもを見てくれる事も!市や区によってサポート体制は異なりますので、担当課に問い合わせてみて下さい。
また、この時期は子宮内・膣の傷からの出血や分泌物を含む「悪露」が続きます。入浴する事で菌が傷口に侵入し化膿する場合も考えられますので、湯船には浸からずシャワーのみにしましょう。
上のお子さんに愛を伝える!
2人目以降の出産だったママの悩みで多いのが「上の子の赤ちゃん返り」や「精神不安定」ですよね。
大好きなママの不在が1週間も続き、やっと帰ってきたと思ったらママは小さな赤ちゃんにベッタリ…。これでは上のお子さんの心が満たされる事はありません。
上のお子さんの精神が不安定になりやすいこの時期は、「しっかり抱きしめて言葉で愛を伝える」様にしたいですね。
「ママは新しい赤ちゃんも好きだけど、○○が1番大好きだよ!」「ママ、入院中○○がいなくってずっと寂しかったよ!」など、上のお子さんが第一である事をしっかりと抱きしめて伝え続けましょう!
ママの愛を確認できた上のお子さんは、きっと新しい赤ちゃんの存在を喜んでくれる様になってくれるはず!
産後3週間の過ごし方(外出は控えよう!)
赤ちゃんとの生活にもだんだん慣れてきて、出産によって消耗された体力も徐々に戻るようになってくる3週目。「なんだか身体の調子が良くなってきた!」と思っても、ホルモンバランスや子宮が妊娠前のように戻るのにはまだまだ時間がかかります。
溜まった家事や上のお子さんの世話などをしたい気持ちは分かりますが、できるだけ安静を心がけたい時期です。どうしても家事などをしないといけない場合は、身体に負担にならないように「今日は洗濯だけ」「今日は味噌汁だけ作ってあとは宅配サービスにしよう」など無理のない程度に工夫しましょう。
早い方では悪露が少なくなってきたり止まったりしますが、湯船へ浸かるのは引き続き避けて下さい。
また、家事などで疲れたな。と思った時は横になったり座ったりして休憩する事が大切です!あまり無理を続けると悪露が増える・発熱・腹痛などにもつながってしまいますよ。
本来ならできるだけ上のお子さんの抱っこも控えたい所ですが、何でもかんでも我慢しては精神的にも良くありません。会陰の傷や帝王切開の傷口が落ち着いていれば「床やソファ」に座り、その上でお子さんを抱きしめてあげて下さいね。
身体もずいぶん楽になってくる3週目のポイントは「安静を心がける」事ですよ!
産後1ヶ月の過ごし方(外に出てみよう!)
赤ちゃんが産まれて1ヶ月になる週は「新生児期」の最終週になります。それに合わせてほとんどの産院で「1ヶ月検診」が実施されていますので、出産した病院で受けましょう。
この1ヶ月検診では、赤ちゃんの発達状態や聴覚検査の結果が出るだけではなく「ママの身体がどのくらい回復しているか?」も一緒に診察してもらえます。
1ヶ月検診で医師から問題ないと言われれば、家事や上のお子さんの世話も通常通りにできる様になります。何か疑問に思う事があれば、1ヶ月検診を利用して医師に確認した方が安心です。
外出は少しずつ、人ごみなどは避けて近所のスーパーへ買い物に行く程度にしましょう。またその際は赤ちゃんを旦那さんなどに預けてママ1人で行くようにしたいですね。時季にもよりますが、赤ちゃんを連れてのお出かけはウイルスや菌などの感染につながります。
医師の許可が出れば湯船に浸かる事も可能になってくる時期ですが、できるだけ1番風呂の綺麗なお湯につかる様に心がけましょう。
産後5週間の過ごし方(妊娠前と同じ生活を!)
生活リズムを整えよう!
出産から1ヶ月経過したので、この時期から「ほぼ妊娠前と同じ生活」に戻す事が可能になってきます。身体の様子を見ながら家事や上のお子さんの世話を再開しましょう!
いつまでたっても授乳とオムツ替えに専念していては、どんどん体力が落ちて行きます。7時に起床・朝食・洗濯・散歩・20時就寝と言った1日のスケジュールを決めて時間通りに行動できる様に生活リズムを整えて行きましょう。
赤ちゃんも毎日のリズムが同じであれば昼夜を認識しやすくなり、夜泣きの軽減などにつながると言ったメリットもありますよ!
パパの存在も思い出して!
所で、赤ちゃんばかりに気を取られてパパの存在を忘れていませんか?
女性は授乳する事により「性欲を抑えるホルモン」が分泌されいますし、赤ちゃんのお世話で疲れていてSEX所ではありません…。そんな時間があれば寝たい!と言うママが多いと思いますが、ここは赤ちゃんがもう一人増えたと思って旦那さんにお付き合いしてあげて下さい(笑)!
産後できるだけ早く性行為を再開させる事は「夫婦関係」を良好に保つ事につながり、自分の欲求を満たされた旦那さんは育児にも協力的になる傾向が!
1ヶ月検診で医師からの許可が出れば、ぜひパパと「夜の営み」を再開させましょう!…と言っても、「そんな事恥ずかしくて先生に聞けない!」と言う女性も多いのでは?
一般的に性行為は「産後1ヶ月からOK」とされていますが、それは「悪露が止まっている事」「出産による傷口が治っている事」などが条件になってきます。
人によれば傷口の完治には2~3ヶ月程度かかってしまう場合もありますので、自分の傷口の様子をよくよく見てみる事が大切です。
「会陰切開の時に縫った糸が溶けきれずに残っていて、会陰につっぱる様な違和感がある」等の症状が残っている場合、性行為はまだ控えた方が良いでしょう。
その場合でも口や手で「旦那さんのお手伝い」をしてあげれば旦那さんは大喜び間違いなし!
「赤ちゃんや上の子の世話に加えて旦那まで?」と眉間にしわを寄せているママはいませんか(笑)?
そんな忙しい日常も、10年経って思い返した時、きっと素敵な思い出としてあなたの心に温かい灯を燈してくれるはずですよ。
産後6~8週間の過ごし方(これって産後うつ?)
体力・身体の中の状態も妊娠前と同じ位にまで回復します。早い方は産後2~3ヶ月で生理が再開しますが、母乳をあげているママは授乳を止めるまで生理が再開しにくい傾向があります。
赤ちゃんがいる生活にもずいぶん慣れ、お世話の仕方にも余裕が出てくる時期です。毎日が楽しくてあっと言う間に過ぎてしまう…と思われる方も多いですが、
「赤ちゃんが可愛いと思えない…」「育児を頑張ってみたけど、私には向いてないみたい…」「産むんじゃなかった…」
と言う風に考えてしまったり親としての自信をなくしてしまう方は「産後うつ」の可能性が!そんな状態が2週間以上続く時は精神科へ受診するなどの手立てが必要になってきます。
赤ちゃんは1人では決して生きて行く事ができない、儚い存在です。せっかくあなたを選んできてくれた赤ちゃん。守れるのは母親であるあなたなんです。
完璧である必要はどこにもありません!むしろ完璧な親なんて存在しません。完璧そうに見える親でも、必ずどこか欠けています。皆それを補える様に努力しながら、悩みながら迷いながら「本当にこれでいいのか?」と自問自答しながら子育てしています。
「神様はその人が乗り越えられる障害しかお与えにならない。」
とよく言われますよね。あなたには母としてしっかり育てていける素質があるから、今あなたの腕の中には小さな命が眠っている事を忘れないで下さい。
産後うつは家族の協力や本人のちょっとした思考の転換で良くなる事があります。「私って産後うつかな?」と思う事があれば、まずは家族や友人に相談してみましょう。
産後の過ごし方のポイント
ここでは産後の過ごし方のポイントを簡単にまとめてみました。
1ヶ月は安静に過ごす
1ヶ月検診で医師の診断を受けるまではできるだけ安静に過ごしましょう。身体に負担がかからない様なアイデアをご紹介致します。
- 1ヶ月間は実家に帰り、赤ちゃんの授乳とオムツ替えに専念。家事や炊事は実母に任せる。
- 里帰りできない場合は宅配サービスを利用し、炊事の負担を失くす。
- 地域の産後サポートを利用して家事をお願いする。
- 出産前におかずを数品作り、冷凍しておく。
- 旦那さんに家事・炊事を頼む。
- 1ヶ月間は掃除しない!と腹をくくる。
- 実母に家事・炊事をしに来てもらう。
- 赤ちゃんが寝たら一緒に寝る。
- 夜中の授乳は添え乳で寝ながらする事で体力温存する。
1ヶ月は入浴と性行為は控える
産後1ヶ月間は湯船に浸からずシャワーのみで済ませるようにしましょう。性行為も再開の目安は産後1ヶ月ですが、傷口の具合によっては痛みが伴う・炎症を引き起こすなどの危険が伴うので不安に思う事があれば必ず医師に確認して下さい。
産褥体操
産褥体操とは、身体を安静にしていなければならない産後8週までの間も行う事のできる体操です。激しい動きはせず、寝たままでもできる動きが多くなります。
産褥体操をする事で「産後の身体の回復を助ける」「血行が良くなり母乳の分泌が良くなる」「妊娠~出産の間に衰えた筋力を取り戻す」と言った効果が期待できますよ。
母体は出産後すぐに回復に向かいますので、褥体操は出産した日から産後6~8週目まで続けて行うのが理想的です。
産後6週目になってしまうと産褥体操の効果はほとんど期待できなくなってしまうと言われていますのでできるだけ早く始めたいですね。
ただ「後陣痛が辛い」「発熱時」等の不調時には無理をせず、ゆっくり休んで体調を整えてからにしましょう!
出産後すぐに始められる産褥体操
足の体操
- ベッドに仰向けになり足をそろえて伸ばす。
- 足首を前後に曲げたり、円を描くように回す。(膝を曲げないように!)
下半身の引き締め運動
- ベッドに仰向けになるか椅子に座る。
- 肛門・膣を意識してぐっと力を入れる。
- 1~2秒キープした後、ゆっくり力を抜く。
首の運動
- 首をゆっくりと前後左右に倒す。その時同時に息をフーっと吐く。
- ゆっくり呼吸をしながら首をぐるっと回す。
腕の運動
- 仰向けになり膝を曲げる。
- 両腕を横に伸ばし、上に上げて手を合わす。
- また両手を下ろし、上に上げる。
深呼吸
- 鼻からゆっくり吸う。
- 口からもっとゆっくり吐く。お腹をへこませて身体の中にある空気を全部吐ききる。
- ①②を5回程度繰り返す。
産褥体操には様々な種類がありますが、上記の体操なら出産後すぐに行う事ができます。回数は自分の体調に合わせて、気付いた時に行う様にしましょう。
日数が経ち、徐々に身体が慣れて来たら「少し運動量のある」体操を加えると効果的ですし、入院中に助産師さんや看護師さんに聞くと詳しく教えてもらえたりしますよ!
栄養バランスを考えた食事を摂る
産後の身体を速やかに回復させるためには「バランスの良い食事」をする事が必要不可欠になります。
特に沢山の血液を失った産後の身体には「鉄分・カルシウム」が重要ですし、授乳はとてもエネルギーを使いますので「たんぱく質」もしっかりと取って体力を付けなければいけません。
赤ちゃんのお世話でゆっくりと食事を摂る時間は無いかも知れませんが、栄養が偏ったままでは母乳の出が悪くなったりしますのでできるだけ栄養バランスを考えたいですね。
昔から日本に伝わる日本食での栄養バランスの整え方を「まごはやさしい」と言う言葉で表現されているのはご存知ですか?以下に産後の身体に良い食べ物をまとめてみましたので、毎回の食事の際に参考にしてみて下さい。
- ま→豆
大豆は「畑のお肉」と言われるほど良質なタンパク質・ミネラルを含んでいます。豆腐なら1/3丁・納豆なら1パックを毎日食べるように心がけましょう。 - ご→ごま
ごまはタンパク質・脂質・ミネラルが豊富です。菜っ葉や白米に振りかけたりしましょう。煎りごまよりもすりごまの方が消化吸収に優れています。 - は→わかめ
ひじきやのり・わかめなどはカルシウムが豊富。海藻類は酢と油を組み合わせる事により吸収率が上がりますので、「海藻酢の物」がおすすめですよ。 - や→野菜
青菜を沢山摂取すると乳質が良くなり、サラっとして詰まりにくい母乳にしてくれるので授乳期には積極的に食べましょう。
ほうれん草や小松菜を茹でた後にミキサーでペーストにし、氷冷器で1ブロック状に凍らせておくとすぐ使いやすいですよ!
ホットミルクの中にポンっと1ブロック入れればカルシウムと同時に鉄分も補給できちゃう「グリーンミルク」の出来上がり! - さ→魚
青魚や鮭には血液をサラサラにしてくれるDHAやEPA・タウリンが豊富です。1週間に最低3日、できれば5~7日を魚料理にすると理想的です! - し→しいたけ
きのこ類は食物繊維やビタミン・ミネラルの宝庫です。沢山食べても低カロリーなので産後のダイエット食としても人気があります! - い→芋
食物繊維やビタミンが豊富で、腸内環境を整えてくれる根菜類は便秘の時に意識して食べると良いですよ。
また、良質な肉もたんぱく原になりますが、脂身の多い部分の摂取は控えましょう。乳腺炎につながってしまう可能性も!
常に身体を清潔な状態に保つ
出産によって子宮や膣の内部には傷が沢山できています。帝王切開された方は切開の傷がとても痛むと思います。
身体を清潔に保つと言う事は様々な菌によって引き起こされる炎症の予防にもつながりますので、発熱などをしている場合を除いてできるだけ毎日お風呂に入り、傷口を優しく洗いましょう。
会陰切開の傷は産後1ヶ月程度で治るとされていますが、その間はお手洗いを済ませた後に「脱脂綿」などで尿を拭き取り清潔にしましょう。
長く休み過ぎない
布団を敷いたままで赤ちゃんの授乳やオムツ替えに専念してもいいのは産後1ヶ月までです。
それ以上のダラダラとした生活はママの体力をもっと落としてしまう事につながりますし、赤ちゃんにとっても良くありません。
産後4週目辺りから、ゆっくり家事をしたり少し散歩をしてみたりしながら身体を動かし、妊娠前の様なメリハリのついた生活ができる様に体力をつけて行きましょう!
産後の過ごし方NG行動
「産後にしてはいけないこと」はあるのでしょうか?以下にご紹介する行動は「産後の肥立ち」=「出産~産後8週目」において母体の回復に支障を与えると言われている事になりますが、その理由とは…?
重い物を持つのはNG
妊娠し、約10ヶ月かけて徐々に増やしてきた物を一気に失うのが出産です。赤ちゃんが産まれ、胎盤が子宮から剥がれると身体の中の働きやホルモン状況は一気に回復に向かいますが母体はその変化について行けません。
そんな時期に重い物を持つために身体に力を入れると、めまいや震えが起こったり身体のバランスを崩してしまいます。
帝王切開をした方は傷口が開いたり悪化してしまう可能性もありますよ!
産後1ヶ月間は「身体に力を入れず、ゆったりと過ごす」事で、出産で消耗した体力を回復させる事に専念しましょう。
赤ちゃんや上のお子さんの抱っこなども立ったまませず、できるだけ座った姿勢で行う様に意識すると良いですね。
目を酷使するのはNG
目を酷使すると血液を沢山使いますので、目が疲れやすくなったり視力が落ちたりする場合があります。
読書だけではなく、スマホやパソコンの使用はできるだけ控えましょう。
完璧を求めてしまうのはNG
産後、特に初産婦の方にとって「完璧を求めすぎないこと」は一番大切な事ではないでしょうか?
家事も、炊事も、赤ちゃんのお世話も、旦那の事も、自分の仕事の事も…など全部の事を完璧に求めると、必ず自分を苦しめる事につながります。
家事が溜まって家の中が汚くたって、晩御飯がレトルト続きだって、いつもすっぴんでいたって、上手に授乳できなくたって、「ママがいつも笑顔でいる事」が何よりも大切なんです!
さいごに
やっと会えた可愛いわが子。これから一緒に散歩したり、お出かけしたりと子どもと楽しい思い出を作っていくためにはママの身体が健康である事が第一です!
赤ちゃんのお世話に集中してしまう気持ちは分かりますが、時々は自分の身体の声にも耳を澄ませてみて下さいね!