
離婚の理由としてよく言われる「性格の不一致」。協議離婚の離婚原因でも最も多いとされています。
調停書類の申し立て動機欄トップにも「性格が合わない」と書かれている程です。
では性格の不一致による離婚とはいったいどんなもので、何が合わなくなるのでしょうか?
性格の不一致で離婚に至る場合の過程や注意点などと合わせて調べてみました。
目次
離婚原因の「性格の不一致」とは
一言に性格の不一致といっても、それは夫婦によって違います。些細な行き違い、食い違いから始まり、次第に許せないものになっていくのです。
何が合わなくなるの?
例えば、結婚当時は「男らしくてカッコいい」と思っていた強引な性格が、年齢を重ねると共に、「我がままで自分勝手」になってしまいます。子供が生まれた後での教育方針の違いもよくある性格の不一致です。
親や親戚に対する考え方や金銭感覚などに関する意見の食い違いなどもあるでしょう。
きっかけは些細なものかもしれませんが、軌道修正をしないまま不満を積み重ねていくと、いつしか信頼関係や愛情にも亀裂が入り、次第に修復出来ないところにまで発展するのです。
いつごろから合わなくなるの?
性格の不一致というものは、突然発生するものではありません。結婚当初から予兆はあるはずです。ただ、結婚当初は「そんな部分も含めてすべてが好き!」と思い許せてしまったものが、長年の結婚生活によって生じた気持ちの行き違いによって性格の不一致に発展してしまうようです。
離婚理由としての「性格の不一致」はあり?
よく、正式な離婚理由として「性格の不一致」では認められないという話がありますが、実際はどうなのでしょうか?離婚方法などによって違いがあるのでしょうか?
協議離婚・調停離婚でならばOK
①協議離婚
夫婦間での話し合いで離婚に合意する協議離婚の場合、双方が納得していれば離婚の理由や事情は関係ないので、「性格の不一致」でも問題はありません。日本の離婚の約90%はこの協議離婚です。
ただし、簡単な離婚方法であるため、養育費や財産分与、慰謝料の金額など、十分に決めないまま離婚してしまう傾向にあるので、簡単だからと安易に協議離婚を選択することは注意した方がよさそうです。
②調停離婚
相手が離婚に応じなかったり、離婚条件に大きな開きがあり話し合いがまとまらない時は、申し立てにより家庭裁判所の調停に持ち込むことが出来ます。この場合も、離婚理由について特に制約はありません。
調停の申立書はだれでも一人で簡単に申し立てができるように、「申立ての動機」としていくつかの理由があげられていますが、そのトップが「性格があわない」です。
その他には
- 異性関係
- 暴力をふるう
- 酒を飲みすぎる
- 性的不満
- 浪費する
- 異常性格
- 病気
- 精神的に虐待する
- 家庭をすててかえりみない
- 家族と折合いが悪い
- 同居に応じない
- 生活費を渡さない
- その他
などがあります。離婚調停手続きは、家庭裁判所において、調停委員が、双方から事情を聞き、裁判官の指揮のもと両者の間に入って調停案を示すなどします。
当事者間で自主的任意的解決を図ろうとするのです。
離婚裁判では、双方が納得していなければ理由にならない
協議・調停を経ても離婚の合意が出来ない場合、離婚裁判となります。裁判の場合は、法律上決められた理由が必要になるので、「性格の不一致」を離婚の原因とするのは難しいです。法定上の離婚理由としては
①配偶者に不貞の行為があった時
②配偶者から悪意で遺棄されたとき
③配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
④配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
の5つとされています。
「性格の不一致」で離婚、の落とし穴
性格の不一致で、婚姻が破綻した場合、そのほかに、特に浮気やDVなどの原因が無い場合は、性格や価値観など夫婦双方に少しずつ責任があるという事になります。
この場合、離婚は成立しても慰謝料はもらえません。
慰謝料がもらえるのは、相手に主に離婚原因がある時だけです。離婚=慰謝料のような考えで、安易に話を進めるのは止めましょう。
怒りにまかせた別れ話はだめです。離婚したいと思い、離婚話を切り出した後は、夫婦で冷静に話し合うことが難しくなります。財産や親権、養育費など事前にクリアにしておかなければいけない条件は思っているよりも沢山あるので、しっかりと話し合いを進めるか、条件面で折り合いがつかなければ、きちんとした理由を考えた上で離婚裁判までもっていくのが良いでしょう。
「性格の不一致」の裏に隠れている本当の理由
このように、常に離婚理由のトップとしてあげられる「性格の不一致」ですが、実際にはほかの明確な理由があっても、とりあえず「性格があわない」をあげる人も多いようです。ある意味「性格の不一致」という言葉ほど便利な言葉はないのかもしれません。
浮気・不倫
性格の不一致で離婚をした夫婦のうち約70%の確率で、本当は夫や妻の浮気・不倫が原因だった、という事があります。
なぜ性格の不一致を理由にするのかというと、不貞行為を隠して「性格の不一致」という理由で協議離婚によって簡単に別れれば、慰謝料や養育費の問題に触れずに済むからです。相手に対して慰謝料を払ったり、逆に相手から慰謝料をもらうために浮気や不倫を隠す夫や妻は多いようです。
「性格の不一致」にならないために
「性格の不一致」に至らないためには、結婚生活というはもともと生まれも育ちも違う男女が一緒に暮らしているのだという事をもう一度思い返す必要があります。一つや二つ意見が合わないことがあったり、性格が違っているのは当たり前と思わなくてはいけません。
相手の性格が嫌だと思う人は、自分の事が良いと思っている訳ですが、
それは、相手から見れば同じことが言えるという事も理解しなければなりません。
新婚時代ならともかく、いつも二人の考えが同じという訳にはいかないのが普通です。性格が違う二人が夫婦になるのですから、理解し、協力し合って不一致の溝を埋めれば、「性格の不一致」と思わなくて済むのかもしれません。
さいごに
夫婦間の「性格の不一致」は、離婚の始まりとも言えます。しかし、夫婦とはいえ、出会う前には赤の他人だった訳です。特に子供が居たりする場合、もう一度離婚の理由をゆっくりと考えて、やり直す余地がないのかを探ってみても良いのかもしれません。